第110章

夜が更けたとき、高橋遥は稲垣栄作からの電話を受けた。

外は雨が降っていて、彼の声ははっきりとは聞こえず、少し朧げだった。「明日の午後四時に別荘に来てくれ。離婚の件について話し合おう」

高橋遥は少し恍惚としていた。

彼女が稲垣栄作の急所を突き、彼の最終的な選択を見抜いていたとしても、こんなにもあっさりとは思っていなかった。稲垣栄作があっさりと離婚に同意するなんて。

一瞬、様々な感情が胸に去来した。

しばらくして、ようやく我に返った。「やはり法律事務所で話し合いましょう」

稲垣栄作の態度は非常に断固としていた。「私たちの結婚のことだ、部外者に介入させたくない!別荘に戻って話そう。さも...

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